“魔法なんていらない”
スタジオジブリのスタッフが勢揃いした、スタジオポノックの第1回長編作品『メアリと魔女の花』
魔法文学では珍しく、魔法使いが登場する物語でありながら魔法に頼ろうとしません。
ジブリの作品を見るときはどうしても過去のジブリ作品と比較してしまいがち。
上映前は「魔女の宅急便と無意識に比べてしまわないかな」と懸念していましたが、全然そんなことはなく、新鮮な気持ちで見ることができました!
ストーリーのテンポが良く、メアリの想いや行動がハッキリしていて、見ていて気持ちの良い作品でした!
素敵な作品を作ってくれた製作陣に感謝!!
メアリと魔女の花 あらすじ
全く新しい魔女映画「メアリと魔女の花」のあらすじをまずは振り返りましょう!
盗まれた魔女の花
“花の種を持っているぞ、逃すな!”
物語は赤毛の魔女が魔法の花の種を盗み出すところから始まります。必死に逃げる魔女ですが、魔法の攻撃を受けてバランスを失い、ホウキから振り落とされます。
落ちていく魔女の手から離れた花の種は、とある森に落ちてやがて花を咲かせます。
赤い髪の少女 メアリ
月日は流れ、舞台は赤い館村へ。
引っ越してきた少女メアリは、テレビもゲームもない生活に退屈していました。
いつも冴えない表情のメアリ。鏡を見ても、そこに映るのは大嫌いな”赤い髪”
“私に何かお手伝いすることはありませんか?”
家事を手伝おうとするメアリですが、何をやっても失敗ばかり。カップを手から離し、大事な庭の花を折り、掃除をしても庭を汚してしまいます。
“何だ人か?サルかと思った”
メアリをバカにする、赤い館村の少年ピーター。
“アタシになんか一生いい事起こらないな”
落ち込むメアリは黒猫のティブとその恋人(恋猫?)のギブを追いかけて、初めて森に入ります。
“キレイ”
そこでメアリが見つけたものは7年に一度しか咲かない不思議な花「夜間飛行」。庭師のゼベディおじさんによると、かって魔女たちが探し求めた花とのこと。
メアリは”魔女の花”を窓際に飾って眠りにつきます。
メアリ、魔法の世界へ
次の日、シャーロットおばさんからピーターへのお届け物を頼まれたメアリ。
“よう、赤毛の子ザル”
メアリに出会うと、開口一番バカにしてくるピーター。
“私だって変わりたいと思っているんだから”
メアリは姿を見せないティブを探すため、「霧の日は森に入ってはいけない」というピーターの忠告を無視して森の奥へと進みます。
そこで見つけたのは、読めない文字が刻まれたホウキ。突然≪夜間飛行≫がメアリの手の中で光り輝き、ホウキが空へと飛び立ちます。
上へ上へ、雲の上へ飛んでいくメアリ。辿り着いたのは雲海の中にある魔女の国でした。
“夢を見てるんだ”
状況が分からないメアリの前に現れたのはホウキ小屋の番人フラナガン
フラナガンは黒猫ティブを連れたメアリを新入生だと勘違いして、存在によりエンドア大学まで案内します。
エンドア大学
サグラダファミリアのように綺麗な光が差し込むエンドア大学。そこは選ばれし魔法使いだけが入学を許可され、不法進入者は変身の刑を受けます。
“アナタ素晴らしい才能をお持ちのようね”
“古今東西、赤毛の魔女は優秀なの”
校長マダムからコンプレックの象徴だった赤毛を褒められて、上機嫌のメアリ。
入学願書を手に入れるため訪れた校長室では意図せず「呪文の神髄」と書かれた本を手に入れます。
“才能があるんではなくて、魔法の花の力なんです”
全てを白状しようとするメアリですが「魔法の花」という言葉を聞いた瞬間にマダムの態度が豹変します。
“何を隠しているの?見せなさい!”
怖くなったメアリは呪文の神髄をカバンに隠し、ピーターの住所が書かれたメモを手渡します。
“その子の花なんです。私よりも才能があって”
怖くなったメアリは咄嗟に嘘をつきます。
さらわれたピーター
“信じられないくらい幸せな1日でした”
家に帰り、幸せそうにご飯を食べるメアリ
褒められたことを思い出してニヤつきながら布団に入りますが、ピーターの姿が見当たらないとの連絡が。
追い討ちをかけるようにマダムから魔法の手紙が届きます。
“ピーターを返して欲しければ魔法の花を持ってきなさい!持って来ない場合、不法進入者は変身の刑です”
エンドア大学に戻る気はなかったメアリですが、ピーターを助けるため、再びホウキの乗ります。
“その花はキミが持つには危険すぎる”
約束通り夜間飛行の花を持ってきたメアリですが、花を奪われて禁固室に閉じ込められます。
そこにいたのはオリに囚われた、奇妙な格好をした動物たち。しかも、その1匹はギブでした。
禁固室にはピーターもいました。このままだとドクター・デイの変身の材料にされてしまいます。
“そうだ!私、今夜だけは魔女なんだ”
「呪文の神髄」を開いたメアリが全ての魔法を解く呪文を使うと、動物たちが元の姿に戻り、魔法の扉も解除されます。
一斉に脱走する動物たち。メアリとピーターも一緒に逃げようとしますが、ピーターは再びマダムに捕まってしまいます。
“いいぞ、その顔。純真な眼差しを持つ子供は変身にうってつけだ”
ピーターを使った実験の準備が進みます。
赤毛の魔女の正体
一方でマダムの手から逃れたメアリが辿り着いたのは謎の館。
“もうお戻りになることはないと思っていました”
メアリが入り口に立つと、自然にドアが開きます。
なんとそこはシャーロットおばさまの家。
冒頭で魔法の花を盗み出した赤毛の魔女はシャーロットでした。
“あの人たちは生徒たちを変身させ、膨大な力を持たせようとしていた。この世界には私たちには扱いきれない力があるのよ”
シャーロットが魔法の花を盗み出したのはマダムとデイの暴走を止めるためでした。
“それが最後の一輪よ”
シャーロットはメアリに魔法の花を託します
“私はアナタを信じて待ちます”
ピーターとの約束
“約束したの。私一緒に帰るって”
メアリは赤い館村に帰らずに、ピーターを連れ戻そうとします。
しかし、呪文の神髄を取り返そうとするマダムに襲われて森に墜落し、頼みのホウキも折れてしまいます。
“魔女の花”の力は消え、魔法に頼ることはできません。
落ち込むメアリを救ったのは、金庫室に囚われていた動物たち。彼らの助けにより、実験室に潜入します。
“これで全ての人に魔法が使える素晴らしい世界になるでしょう”
しかし、ドクター・デイの実験は失敗。現れたのは暴走する魔法の化け物でした。それでもメアリはその化け物の中にはっきりとピーターの姿を捉えます。
“今のピーターならこの呪文が使えるはず!”
化け物の一部となったピーターが必死に呪文の神髄に触れると、全ての魔法を解く呪文が発動し、ピーターは元の姿を取り戻します。
“そこらにホウキを置きっ放しにしたらいかんだろ”
どうやって戻ろうと途方に暮れていたところメアリの元に現れたのは箒小屋の番人フラナガン。
ホウキに乗って空を飛ぶメアリの髪についていたのは夜間飛行
“でも、私にはもういらないの”
晴れ晴れとした表情のメアリは夜間飛行を投げ捨て、赤い館村に帰ります。
メアリと魔女の花 感想
まず感じたのは、この世界に悪役はいないってこと。
マダムとデイの目的は「生徒に全ての魔法が使える力を与えること」
魔法科学者のデイが最後まで魔法を使わなかったため、デイに魔法の力を与えることが裏目的だと思ってました。
でもそんなエゴは一切出していませんでしたよね。自分のためではなく、あくまで生徒のため。ここが今まで見てきた悪役とはちょっと違うなと感じた点です。
マダムとデイがそういう考えに至った理由がほとんど描かれなかったのが残念ですね。2人ともインパクトはありましたが、感情移入できるほどの魅力はありませんでした。
悲劇の悪役にするか、どうしようもないクズとして描くか、振り切って欲しかったです。
そんなマダムとデイですが、魔女の花が「制御しきれない力」だとわかっていませんでした。
面白かったのは、「全ての魔法を使える力」を生徒に与えようとしていたのに、ピーターの実験に失敗してできた怪物を「そいつは全ての魔法を使える化け物だぞ」と呼んだこと。
これじゃあ生徒も化け物ですよね笑
よかれと思ってやっていたことが、間違っていたことにようやく気付きます。
この辺りは「原子力」を想像した人も多いでしょうね。「原子力エネルギー」はまさに「制御しきれない力」ですから。
米林宏昌監督が反原発派なのかというと、そうとは言い切れませんが、3.11以降少しづつ記憶が薄らいでいるテーマを観客に投げかけてくれました。
「メアリと魔女の花」で驚かされたのは、冒頭の赤毛の魔女がシャーロットおばさまだったこと。
この2人がどこで出会うのかはずっと気になっていました。
「メアリに魔女の血が一滴も流れていない」といったセリフが途中でありましたが、シャーロットの血が流れていました。シャーロットの家で自然にドアが開いたのがその証拠です。
シャーロットは赤い毛を染めたんでしょうか?メアリが魔法を使えたのは夜間飛行のおかげですが、遺伝もあるでしょう。
夜間飛行は7年に一度咲く花。シャーロットがエンドア大学を抜け出してからは70年くらいの年が経っていると思います。そんなに長い期間、諦めずに実験を続けるなんて、よっぽど叶えたかった夢なのでしょうね。
怖かったのは、これまで何人がドクター・デイの実験の犠牲になったのか。
過去にも生徒に力を与えようとしているシーンがありましたが、失敗しているってことですよね。うーん。
禁固室に囚われていたのは動物だけでしたが、何人もの子供が実験の犠牲になっていたのだとしたら怖すぎます。
たくさんの子供が見る作品ですのではっきりした描写はありませんでしたが、殺された子供たちもいそうです。
夜間飛行の力の暴走を目の当たりにして完全に諦めたと思いますが、子供や動物を強制的に実験材料に使うのは褒められたものではありませんね。
「メアリと魔女の花」で1番好きなのはメアリが魔法の力に溺れなかったところ。
何をやっても失敗続きだったメアリ。コンプレックスの象徴だった赤毛を褒められ、100年に一度の才能と賞賛されたら、その道に進もうかと心が揺れると思いませんか?
でもメアリにそんな欲はまったくありませんでした。
大切な物の軸がはっきりしているんですよね
“一緒に帰ろう!”
“やっぱり我が家が1番”
「魔法と決別する魔女物語」
魔法の力に頼らずに自分の足で力強く歩んだメアリ
そんなメアリに拍手!
魔法はいつか溶けると僕らは知ってる
主題歌「RAIN」より
最後に、ゼベディおじさんイケメンボイスすぎじゃね?
“庭師は庭の一部だからな” のセリフはぐわっときました!
メアリと魔女の花を鑑賞。米林監督の今までの作風より「動」を強くだした作品だなと。ジブリ作品への敬愛さも感じた。魔法大学とゆうゲーム的な世界観はとても好物だったので、ワクワクしたと同時に、ストレートに現実の闇を描いてたようなとこもあり、見応えがありました
AIO #メアリと魔女の花— 大塚 愛 (@ai_otsuka99) 2017年7月17日
「メアリと魔法の花」観てきた。魔女がドローンみたいなのに乗っていたり、魔法学校内でエレベーターが使われていたり、そもそも魔法を使うシーンが全然気持ちよくなかったりで、「魔法ってもういらないんだな」と思わせてくれる映画だった。
— 古市憲寿 (@poe1985) 2017年7月10日
メアリと魔女の花 観てきた。「子供向け」だけど「子供騙し」ではない。メアリのキャラクターが良い。伝統的すぎず現代っ子すぎない。ファンタジーと現実の子供達をつないでいる。佐藤二朗さんのフラナガンさんの陽性の個性がまた魅力的。ジブリの残酷さ、俊敏さはないが優しさ、爽やかさがある。
— 黒子ナズナ (@nazuna2015) 2017年7月8日
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▼SEKAI NO OWARIによる素敵な主題歌「RAIN」
“魔法はいつか溶けると知ってる”