アメトークの読書芸人で紹介されていた「妻に捧げた1778話」を読みました。
番組では面白そうな本がいくつも紹介されていましたが、一番「読んでみたい」と心を動かされた本です。
なるほど、私のしていることは、愛妻美談と見るのも可能かもしれない。だが同時に周囲を意識したパフォーマンスとされかねないのもたしかである。
眉村先生も語っている通り、美談が先行しすぎているため批判を受けかねない本ではあります。
それでも、眉村先生の奥さんへの、そして奥さんから眉村先生への深い愛情が確かに綴られていました。
作家ができる奥さんへの最高のプレゼント。読んで損はない1冊です。
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昨日の放送で盛り上がった妻に捧げた1778話は絶版です。どんなに読みたくても新品は手に入らないのです…良いとおススメする本もいつかは寿命を迎えてしまう。出版業界は不況なので本の寿命も早い…なんとも悲しい限りです。また今度買えば良いか。と、思う事はよくあります。 次へ… pic.twitter.com/FpfOxxfSVk
— 三省堂書店有楽町店 (@yrakch_sanseido) 2017年11月17日
話題沸騰で緊急重版がかかっているようですね。
紙の本を手に入れるのは難しいですが、Kindle版であればすぐに購入できます。
妻に捧げた1778話 あらすじ
余命は一年、そう宣告された妻のために、小説家である夫は、とても不可能と思われる約束をした。しかし、夫はその言葉通り、毎日一篇のお話を書き続けた。
五年間頑張った妻が亡くなった日の最後の原稿、最後の行に夫は書いた──「また一緒に暮らしましょう」。
妻のために書かれた1778篇から19篇を選び、妻の闘病生活と夫婦の長かった結婚生活を振り返るエッセイを合わせたちょっと変わった愛妻物語。
妻に捧げた1778話 感想
まず、この本が読み進めていたときの正直な感想ですが、お世辞にも面白いとは思えませんでした。
眉村先生の作品を読むのはこれが初めて。自分自身が短編というものを好きでないだけかもしれません。
毎日1話づつ執筆するのは想像もつかないほど大変だと思いますが、心が踊る作品はほとんどありませんでした。若者向けではないですね。
ただ、そもそも一般向けに書かれた作品ではありません。
タイトル通り「妻に捧げた1778話」に対して、「面白い or 面白くない」のジャッジをするのも品がない気もします。
この本に載せた作品は、当然ながらそのごく一部で、選んだ基準にしても、出来の良し悪しより、書きつづけている間のこちらの気持ち・手法の変化とその傾斜――ということを優先させた。そのあたりを読み取って頂きたいのが、私の願いである。
作者の眉村先生もこのように語っていますし、「このとき眉村先生はどんな心情だったのだろう?」と想像しながら読むのが、正しい読み方かもしれません。
「妻に捧げた1778話」は単なる短編集ではなく、毎日1話を書き続ける日々の中での眉村先生の心情の変化が綴られています。
個人的には短編よりもこちらの方が読み応えがありました。
この本には1778話の短編集のうち、19話しか収録されていません。
もしかしたら本当に面白い話は「僕と妻の1778話」に収録されているかもしれませんね。こちらには52話が収録されています。
なお、短編の後に「自己注釈」ということで1話1話に対しての眉村先生の心境が綴られています。
「あとがき」がなければ作者の気持ちを知る機会など滅多にないので、マジックの種明かしを読んでいるような気分で面白かったです。
妻に捧げた1778話 印象に残ったこと
さて、最終話を除いて「妻に捧げた1778話」で印象に残ったのはこの場面。
そのとき私の脳裏には、前年の三月に二人で松尾寺に詣ったさい、祈願の札に、病気平癒と書けと私が二度も言ったのに、妻は聞かず、文運長久とだけしるしたことが、よぎっていた。私の協力者であることに、妻は自負心と誇りを持っていたのだ。
眉村先生の妻であることに、奥さんが誇りを持っていたのは、作家冥利、いや夫冥利につきるのではないでしょうか。
夫婦というものはそういうものだと思いますが、結婚してから何年経っても、お互いがお互いの存在を誇りに思うのは素晴らしいことだと思います。
眉村先生自身も、奥さんの存在に助けられたような描写もたくさんありましたね、
原稿を書き上げると私は、妻に読んでもらうのがならいであった。読めない字や脱字を指摘してもらうためである。だが、ときどき感想を述べたり、 「女の人はこんな考え方せェへんよ」 と言ったりで、読んでもらうことでいろいろ助かったのである。
「しんどかったら、やめてもいいよ」
「自分がやりとうない仕事やったら、断ったらええやんか。家のことは何とでもなるんやさかい」
妻にとって小説は、小説として出来が良く、心の琴線に触れるとか面白いとかでなければならず、読者を無視したり軽視したりしているものは、認めがたかったようである。
私自身もブログを書いていて、奥さんから指摘をもらうこともあるので、この気持ちはよく分かります。
誤字や脱字は本人だと気づかないことも多いですし、奥さんの何気無いひとことで初心に戻れたりします。
眉村先生が奥さんに救われていると実感できていたからこそ、奥さんも眉村先生の妻であることに誇りを持っていたのでしょうね。
妻の本心は、共に人生を過ごし、ずっと協力者であったことを証明したい――ということだったに違いない。私にはそれが痛いほどよくわかった。
妻に捧げた1778話 最終回
「妻に捧げた1778話」で一番楽しみにしていたのが「1778話目の最終回」
なんせあのカズレーザーが15年ぶりに泣いたとのこと。
「夫婦の絆の美しさが詰まっている」と熱く語っていたので、どんな長編なのかと期待してページをめくったところ、なんとわずか6行でした。
ページを跨いでいたので、見逃したのか確認しましたが、何度確認しても6行です。
そもそも妻に読み聞かせるために書いていたので、いまさら長文を書いたところで意味がないんでしょうね。
たったの6行。たったの6行ですが、この6行からたくさんのことを想像できます。
眉村先生は毎日1話を書き続けるにあたり、いくつか制約を設けました。そのひとつがこちら。
そして肝心なのは、読んであははと笑うかにやりとするものでありたい、ということだった。
最終回は、奥さんが天国で微笑んでいるのが想像できる内容でした。
気になる方はぜひ読んでみてください。